システム×人材×DXの支援で特許事務所のDXを牽引!ジムウイン・望月俊一の展望
INTERVIEWEE
株式会社ジムウイン代表取締役
望月俊一
大学で機械工学を専攻後、ITエンジニアとしてキャリアをスタート。その後、特許事務所に転職し、図面作成や特許調査、明細書作成などの業務に携わりながら事務所内のシステム担当も兼任。17年間の勤務を通じて特許事務所の業務プロセスに精通し、2019年に株式会社ジムウインを設立。特許事務所向けの特許管理システムや事務支援サービス、DX支援サービスを提供している。
特許事務所の業務は、法定期限の管理や複雑な手続きが多く、一切のミスが許されない厳しい世界である。そんな中、ITエンジニアとしてのバックグラウンドと特許事務所で働いた経験を活かし、業務効率化と自動化を実現するサービスを提供しているのが、株式会社ジムウイン代表・望月俊一氏だ。
新卒で入社したIT企業から、なぜ特許事務所に転職することになったのか?「自分には裏方があっている」と語る望月氏が、なぜ起業という道を選んだのか?同氏の人生を振り返りながら、事業の詳細と今後の展望についても話を伺った。

ソフトウェアの世界から、知財の世界へ
—【聞き手:松嶋、以下:松嶋】自己紹介をお願いします。
—【話し手:望月 俊一氏、以下:望月】株式会社ジムウインの代表をしている望月俊一と申します。
大学で機械工学を学び、卒業後はPOSシステムを開発しているIT企業にエンジニアとして就職しました。約2年間エンジニアとして経験を積んだ後、特許事務所に転職して事務員兼システムエンジニアとして働きながら知財に関する勉強を続けていました。その中で事務作業の非効率に課題意識を抱くようになり、自分でソフトウェアを開発することを目指して、2019年にジムウインを立ち上げました。
—【松嶋】もともとは機械工学を学ばれていたのですね。
—【望月】そうですね。そこまで深く考えていたわけではないのですが、車やバイクが好きだったため、自分でカスタマイズできるようになれば面白そうだと思ったんです。
—【松嶋】なるほど。大学を卒業後、ITの仕事に就いたきっかけは何だったんですか?
—【望月】就職氷河期で就職先を選べる時代ではなかった、というのが正直なところです。たまたま声をかけてくださった方がいて、そのまま流れに身を任せるような形で就職しました。
ただ、深く考えずに成り行きのような形で就職したからか、次第に「このままで良いのか」と思うようになり、考えた末に2年ほどで転職することにしました。
—【松嶋】転職先として特許事務所を選ばれた理由が気になります。
—【望月】将来のことを考えて、安定した仕事を求めていたんです。転職先を探している時に、知財業界の求人広告を目にして、関心を持つようになりました。ただ、当時は特許事務所での就業経験がある、もしくは弁理士資格を持っている人でなければ入所するのは難しくて。
どうすれば特許事務所に入所できるのかを考えて色々と調べていたら、知財業界では製図のスキルが重宝されることを知りました。私は機械工学を学んでいて製図のスキルがあったため「図面が描ける人」という枠で採用していただくことができたのです。

知財を学び「やりたいことをやろう」と思えるように
—【松嶋】特許事務所では、どのような仕事をしていたのですか?
—【望月】製図業務と並行して、事務所で使用していたシステムの運用も担当していました。特許事務所に所属している専任のシステムエンジニアというと、当時は珍しい存在だったかもしれません。
—【松嶋】特許事務所でのシステム担当として、やりがいは感じられていましたか?
—【望月】入所したばかりの頃は「自分は何もできない」と思っていたため、仕事をいただけるだけでもありがたく思っていました。PCの不調や期限管理ソフトの動作不良といったトラブルを解決し、事務所の方に喜んでいただけるのは嬉しかったですね。
—【松嶋】特許に関する業務では、具体的にどのようなご経験をされましたか?
—【望月】図面の作成業務からスタートして、次第に特許調査を任せていただくようになり、最終的には明細書も作成していました。
所長先生は丁稚奉公をモットーにされており、まずは下働きから始めるというスタイルだったんです。「図面が作成できなければ、明細書の技術を真に理解できない」という考えから、図面ばかりを書いている時期がありました。
その後、特許調査を任せていただくようになり、中間処理(出願してから登録されるまでの手続きなどの総称)への対応力を鍛えました。当時は自社で特許調査をするクライアントが多かったのですが、私が担当するようになった頃から外部に依頼する企業が増えたため、タイミングが良かったと言いますか。おかげさまで、この期間に専門スキルを大きく伸ばすことができました。
このようにして知財の基礎知識を習得し、特許庁への対応などについても学んだ後、明細書作成にも携わるようになりました。
—【松嶋】弁理士の試験は受けられていたんですか?
—【望月】何回か受験しましたが、諦めました。知財は幅広い知識を必要とされる業界ですし、それを理解するのに精一杯で。言い訳になってしまうのですが、仕事の忙しさもあり、資格取得へのモチベーションが薄れていったのです。
さらに、私が所属していた事務所は、資格の有無に関係なく実績で評価してくださる方針でした。そのため「資格がなくて困る」ということもなかったんですよ。独立するのであれば資格が必要ですが、私はコミュニケーションが得意な方ではなく、裏方として業務に徹するのが性に合っていると思っていました。
—【松嶋】「裏方が性に合っている」と自負されていた望月さんが、起業を決意されたきっかけは何だったのですか?
—【望月】17年間同じ事務所に勤めて、何か新しいことに挑戦したいと思うようになったんです。他の特許事務所へ移るという選択肢もありましたが、それ以上に何か大きいことに挑戦したいなと思って。
自分に何ができるかを考えた時、システムエンジニアとして課題を解決して事務の方に喜んでもらえた経験が強く頭に残っていて「これを仕事にしたら楽しいのではないか」と思い、起業することを決意しました。経済的に困窮するようなことになっても、自分一人なら何とかなりますし、せっかくなら自分の「やりたいことをやろう」と思ったんです。それで、2017年に退所し、システム開発と並行して起業準備を進め、2019年にジムウインを設立しました。
—【松嶋】進学や就職の意思決定において「深く考えずに決めた」とお話しされていましたよね。今のお話を踏まえて改めて考えると、望月さんは「何とかなる」の精神を持たれていて、そういった軽やかな考え方が、強みにつながっているのだと感じました。
—【望月】ありがとうございます(笑)。それが強みなのかはわかりませんが……、機械工学を学んでいなければ特許事務所には入所できなかったでしょうし、ソフトウェアエンジニアの経験がなければ、事務所のシステム運用を任されることはなかったかもしれません。改めて振り返ると、全ての経験が今につながっているのだなと思いました。

特許事務所での経験を生かし、ジムウインの挑戦がスタート
—【松嶋】ジムウインについて、改めて教えてください。
—【望月】ジムウインという社名は「事務」と「Win」を組み合わせた造語です。私たちは、特許管理システムを核として、特許事務作業のアウトソーシング、さらにはDX支援といった幅広いサービスを提供しています。
—【松嶋】ジムウインの祖業は、特許管理システムなのでしょうか?
—【望月】そうです。本当は、事務支援のサービスから始めたいと思っていたんですけどね。
当時、日本には約4300の特許事務所があり、そのうちの約70%が1~2名で経営されている小さな事務所でした。家族経営の事務所も珍しくなく、その多くが事務スタッフの採用に頭を悩ませていました。
正規雇用となると固定費が発生しますし、そもそも1名を常時雇用するほどの作業量があるわけでもなく。「必要な時にだけ手伝ってほしい」というスポット的なニーズがある状態でした。そこで、複数の事務所で事務スタッフをシェアするような仕組みを構築できれば、関係者全員がWin-Winになるのではないかと考えたのです。
—【松嶋】それなのに、なぜ特許管理システムの提供から始めることにしたのですか?
—【望月】特許事務所にとって一番重要なのが、特許の管理だからです。特許権の申請時や特許庁への返信、特許権の延長など、弁理士の仕事には全て期限がも受けられています。そして、弁理士の仕事で一番やってはいけないとされているのが「期限を徒過してしまうこと」なのです。そこで、そういった重要な期限を手間なく管理できるシステムの提供を最優先にするべきだと考え、特許管理システムから始めることにしました。
また、システム提供である程度売上が立った段階で有人のサポートサービスも加えようと思っていたのですが、類似システムが苦戦しているところを見て、事業開始当初から有人サポートも組み合わせて提供するようにしました。
—【松嶋】有人サポートというのは、特許事務作業のアウトソーシングサービスと同じものですか?
—【望月】有人サポートから派生する形で、特許事務作業のアウトソーシングがスタートした、というイメージですね。
これは日本企業の特徴だと思うのですが、クライアントは既存のワークフローを変えることに抵抗を感じる傾向にあります。しかし、もし一人のスタッフが複数の事務所を支援するとなると、各クライアントのルールを覚える必要があり、負担が重くなってしまいます。そこで、複数の事務所で共通するような定型的な業務やプロセスを切り出し、共通化・標準化して、アウトソーシングサービスを始めました。
—【松嶋】なるほど。特許管理システムの提供を開始して、反響はありましたか?
—【望月】はい。良い反響をいただきました。当初はシステムのバグが発生しており、それらを解消するまで広告を出していなかったのですが、ホームページを公開した直後から複数の問い合わせをいただきました。
この時期に、良い弁理士先生との出会いがあり、その方にご協力いただきながらトライアル&エラーを繰り返してシステムをつくりあげていくことができました。
—【松嶋】ちなみに、DX支援はどのような経緯で誕生したサービスなのでしょうか?
—【望月】DX支援については、コロナ禍でリモートワークが浸透し、それに伴いRPAへの関心と導入が進んできたという社会的な背景が関係しています。ここをカバーできれば、今まではワークフローの制約上、接点を持つのが難しかった特許事務所にも、アプローチできるのではないかと考えました。

3つの事業でクライアントの知財業務を強力にサポート
—【松嶋】各サービスの内容を改めて教えてください。
—【望月】特許管理システムは、特許事務所において最も重要な法定期限の管理を、手間なく簡単に行えるように設計されたシステムです。特許関連の書類をシステムに取り込むだけで、期限に関するアラートを自動で通知してくれます。プランによっては有人サポートが付帯しているため、疑問や相談がある時は、チャットを通じてスタッフに問い合わせすることができます。
特許事務作業のアウトソーシングについては名前の通りで、特許事務所の煩雑な事務作業を代行するサービスです。代行スタッフの業務を支える専用アプリケーションやシステムを開発しています。
つまり、ジムウインの提供する価値は、特許管理システムだけには留まりません。システムに加えて専門スタッフによる支援もあり、さらに彼らの能力を最大限に引き出すシステムも提供することで、一連のプロダクトが成り立っているのです。
また、DX支援では、ジムウインで開発しているシステムを提供しつつ、個社対応が必要な部分はカスタマイズし、クライアントのDXを支援しています。こちらについては、サブスクリプションのような形で、月額の保守費用をいただく形で運用をサポートしています。
—【松嶋】DX支援において、カスタマイズの具体的な事例などがあればお話しいただきたいです。
—【望月】ある事務所では、クライアントからの依頼を問い合わせフォームを通じて受け付けていらっしゃいました。そこで私たちは、問い合わせフォームに届いたメールを自動で取り込み、個別の案件として管理・分類できるようにカスタマイズしました。
その事務所では、商標や特許など、依頼の内容によって担当される弁理士先生が異なるため、各担当の先生に自動的にメールが届くように設定しています。
さらに、報告書や見積書を作成するためのツールも開発し、特許出願が必要となった場合には、事務スタッフが使用する出願ツールや特許管理システムに、必要な情報が自動で取り込まれる仕組みも構築しています。
—【松嶋】このようなDX支援サービスに対するクライアントからの反応は、どのようなものだったのでしょうか?
—【望月】とても喜んでいただけました。DX支援を通して、業務の自動化が進んでいる事務所からは「以前は、手作業で行っていた頃の業務を思い出せない」といった嬉しいお言葉をいただいています。作業量が以前の半分以下に減っているため「もう手作業の時代には戻れない」とおっしゃっていました。
—【松嶋】とても好評いただいているのですね。ところで、特許管理システム、特許事務作業のアウトソーシング、DX支援は、セットで契約されるクライアントが多いのですか?
—【望月】事務所の形態によって利用されるサービスは異なります。開業時にご相談いただく場合は、アウトソーシングサービスが喜ばれる傾向にあります。しかし、すでに事務スタッフを抱えていらっしゃる場合は、特許管理システムやDX支援を利用されることが多いです。

KEYPERSONの素顔に迫る20問
Q1. 出身地は?
栃木県です。
Q2. 趣味は?
車が好きで、運転するのはもちろん、車のレストアをするのも趣味ですね。
Q3. 特技は?
特に思い浮かばないのですが……強いて言うなら、寝つきは早いです。
Q4. カラオケの十八番は?
THE YELLOW MONKEYが好きで「JAM」はよく歌います。
Q5. よく見るYouTubeは?
生き物全般が好きで、虫取りの動画をよく観ています。
Q6. 座右の銘は?
あまり考えたことはないですね。
Q7. 幸せを感じる瞬間は?
レストアのような、モノづくりをする上で壊れているものを動くように修理している時は幸せを感じます。
Q8. 今の仕事以外を選ぶとしたら?
車関係、もしくは水族館とか生き物に関わる仕事は楽しそうだなと思います。
Q9. 好きな漫画は?
『頭文字D』。続編として『昴と彗星』の連載も始まっているので、よく読んでいます。
Q10. 好きなミュージシャンは?
THE YELLOW MONKEY。
Q11. 今、一番会いたい人は?
元レーシングドライバーの土屋圭市さんです。土屋さんが運転する車の助手席に乗ってみたいなと。
Q12. どんな人と一緒に仕事したい?
話や志が合う人。同じ目標に向かって一緒に歩いていける人がいいです。
Q13. 社会人になって一番心に残っている言葉は?
特には思いつきません。
Q14. 休日の過ごし方は?
最近はずっと働いているのですが、たまに休みがあると家族と外食したり、趣味に費やしたりしていますね。
Q15. 日本以外で好きな国は?
台湾です。場所は忘れてしまったのですが、屋台のご飯がおいしくて「ここに住みたい」と思った記憶があります。
Q16. 仕事で一番燃える瞬間は?
難しい問題にチャレンジする時。
Q17. 息抜き方法は?
飼っている猫をなでる。
Q18. よく使うアプリやサービスは?
車のパーツを探すのに、Yahoo!オークションはよく見ています。
Q19. 学んでいることや学んでみたいことは?
AIですね。
Q20. 最後に一言
柔軟に対応していますので、ぜひお気軽にご相談ください。

領域拡大も含めて、AIを活用した新たなサービスも検討中!
—【松嶋】今後の展望についてお話いただけますか。
—【望月】直近の話をすると、ある大手企業が提供しているサービスが撤退するらしく、困っているクライアントが多いため、そこをカバーできるソフトウェアを開発しようと考えています。
長期的な視点では、事業を拡大していきたいと思っています。現時点での売上はDX支援が伸びているのですが、ゆくゆくは事務支援の部分を広げていきたいです。知財業界にはさまざまな職業があり、調査担当やIPランドスケープなど、高度な専門知識を要するポジションが多くあります。そういった専門家をチームに加えて、弁理士をサポートし、特許事務所の底上げに貢献できるようにしていきたいですね。
もっというと、税理士や社労士など、知財に近しい領域の専門家も繋げられるようなマッチングサービスができたらいいなと考えています。AIの進化によってできることが劇的に増えているため、将来が楽しみです。
—【松嶋】AIを活用したサービスなども検討されているのですか?
—【望月】まだ検討中ではありますが、具体的に考えているアイデアはいくつかあります。2019年に起業した頃は実現不可能だったことが、実現できる可能性が出てきて、夢が膨らんでいます。
—【松嶋】根本的に、モノづくりがお好きなんですね。
—【望月】そうですね。現在やっている仕事こそが、ある意味では天職だと言えるのかもしれません。起業するときに考えていた「やりたいこと」が実現できていると思います。とはいえ、まだまだ改善するべきところはあります。クライアントから学びながら、ニーズに寄り添ったものを提供していきたいです。
—【松嶋】最後に読者へのメッセージがあればお願いします。
—望月】これから開業しようと考えている弁理士先生がいらっしゃるのであれば、ぜひご相談ください。事務スタッフが見つからない場合は、弊社の特許事務作業のアウトソーシングをご活用いただくことで、一人で運営されている事務所様も安定した業務を続けられるようになります。
事務所の規模が大きくなってきたら、プロセスの問題点を可視化してサポートします。自動化すべき部分、手作業ですべき部分の仕分けも請け負います。
雇用には退職やそれに伴う再教育など複数のリスクがありますが、弊社を頼っていただければ、そういったことは発生しません。リスクを最小限にするとともに、業務の円滑化、事業拡大にも貢献します。
特許事務所の非効率を改善し、フォーカスすべき業務に充てる時間を最大化することが私の使命だと思っています。何か困っていることがあれば、一度問い合わせてみていただければ幸いです。
【クレジット】
取材・構成/松嶋活智 撮影/原哲也 企画/大芝義信
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